【新型コロナウイルス感染症の検査・治療方法】対症療法を行い適宜治療薬を使用します
このページでわかること
- 検査|新型コロナウイルスの感染が疑われると抗原検査またはPCR検査を受けます
- 治療|症状の程度によって治療方法が異なります
新型コロナウイルスの疑いがある場合は、抗体検査やPCR検査を受けます。
陽性と判断された場合は隔離され、治療を行います。
新型コロナウイルスの治療方法は基本的に症状への対症療法です。
発熱やのどの痛みといった風邪症状には解熱剤や鎮痛剤などを服用し、肺炎症状が出た場合は酸素マスクや人工呼吸器などを装着して呼吸を楽にします。
重症化リスクのある場合や症状が悪化した場合は、抗ウイルス剤を投与して原因を取り除く原因療法を行います。
検査|新型コロナウイルスの感染が疑われると抗原検査またはPCR検査を受けます

新型コロナウイルスの感染が疑われる症状が出た・濃厚接触者になった場合には、医療機関を通して抗原検査またはPCR検査を行います。
かかりつけ医がいる場合はその指示に従い、かかりつけ医がいない場合は厚生労働省や各都道府県の保健所または新型コロナウイルス相談窓口に問い合わせて指示を仰いでください。
抗原検査・PCR検査で陽性になった場合は症状によって自宅療養や宿泊療養、入院となります。
陰性の場合は症状が治まるまで、濃厚接触者の場合は感染者との最終接触後14日が経つまでは自宅で経過観察を行ってください。
経過観察時に症状が悪化した場合は、保健所や相談窓口に連絡しましょう。
※厚生労働省の電話相談窓口:厚生労働省|健康や医療相談の情報
※各都道府県の新型コロナウイルスに関する電話相談窓口:厚生労働省|新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先
検査にはPCR検査・抗体検査・抗原検査の3種類があります
発熱やせきといった症状がある・濃厚接触者になったなど、感染が疑わしい時はもちろんのこと、感染しているかを知りたいといった任意でも検査は可能です。
PCR検査 | 抗原検査 | 抗体検査 | |
---|---|---|---|
目的 | 感染しているか | 感染しているか | 感染していたか 抗体があるか |
検査方法 | 鼻や喉の粘膜、唾液 | 鼻や喉の粘膜、唾液 | 血液 |
判定時間 | 約1日 | 約15分~1日 | 約15分~2日 |
精度 | 高い(約70%) | PCR検査には劣る | 検査キットごとに異なる |
費用 | 行政検査:無料 自費診療:数万円 |
行政検査:無料 自費診療:1万~数万円 |
数千~1万円 (自費診療) |
PCR検査
PCR検査は現在、感染しているかを調べる検査です。
診断の精度は、陽性者を陽性と判断する感度が約70%、陰性者を陰性と判断する特異度が約95%以上です。インフルエンザ検査の感度は約50~70%であるため、同等程度と言えます。
感度を見ると、陽性なのに陰性だと判断された偽陰性が約30%もいます。
検査の性質上、感度を100%にするのは難しいため、陰性と判断された場合でも一定期間は感染している意識を持って行動しましょう。
抗原検査
抗原検査はPCR検査と同様に、現在感染しているかを調べます。
発症2日目~9日目以内の患者に関しては、陰性・陽性の確定診断が可能。
しかし、発症日または発症から10日以降に行った検査で陰性と出た場合には、医師の判断においてPCR検査を行う必要があります。

(参考:厚生労働省|SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン)
抗体検査
抗体検査は過去に感染していたか、体内に抗体があるかを検査します。
品質や有効性、安全性が認められた抗体検査キットはまだないため、感染の有無を診断する目的での使用はできません。
PCR検査・抗原検査においては、保険診療であれば費用を国が負担してくれるため無料で受けられます。
しかし、自己判断のもとPCR検査・抗原検査・抗体検査を受ける場合は自費診療となるため全額自己負担です。
治療|症状の程度によって治療方法が異なります
新型コロナウイルスの治療は、基本的には症状の対症療法を行い、場合によっては現在承認または特例承認を受けている治療薬を投与します。
中等症Ⅱまたは重症になると、酸素マスクや人工呼吸器などを使用して呼吸をサポートします。
【承認薬・特例承認薬】
商品名 (成分名) |
製造販売元 | 作用 | 適応症状 |
---|---|---|---|
ロナプリーブ (カシリビマブ/イムデビマブ) |
中外製薬 | 細胞へのウイルスの侵入を阻害 | 軽症~中等症 |
ゼビュディ (ソトロビマブ) |
グラクソ・スミスクライン | 細胞へのウイルスの侵入を阻害 | 軽症~中等症 |
レムデシビル (ベクルリー) |
ギリアド | ウイルスの増殖を抑制 | 中等症~重症 |
デカドロン (デキサメタゾン) |
日医工など | 炎症反応の予防・抑制 | 中等症~重症 |
オルミエント (バリシチニブ) |
イーライリリー | 炎症反応の予防・抑制 | 中等症~重症 |
(参考:新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)|厚生労働省)
【隔離期間】隔離期間は症状の有無によって変わります。
それぞれ1~2の項目のうち1つをクリアすることで隔離を解除できます。
無症状者
1、発症日から10日経過した場合
2、発症日から6日経過した後、24時間以上の間隔をあけて2回のPCR検査で陰性が確認できた場合
※無症状者における発症日とは陽性確定が行われた検体の採取日
有症状者
1、発症日から10日経過し、かつ症状の経過後72時間経過した場合
2、症状軽快後24時間経過した後、24時間以上の間隔をあけて2回のPCR検査で陰性が確認できた場合
(参考:厚生労働省|退院基準・解除基準の改定)
無症状|自治体が指定する施設や自宅にて隔離・静養します
無症状の場合は症状がないため治療方法はありません。 他者との接触を避け、自治体が用意している施設や自宅にて隔離し、安静にしておきましょう。
もし隔離期間中に体調が悪くなった場合は保健所に連絡し、指示に従ってください。
軽症|対症療法によって症状を緩和します
軽症者は風邪に似た症状が見られます。そのため治療方法は基本的に対症療法が取られます。
かかりつけ医や保健所・相談所に紹介された医師と相談して処方してもらった薬、または市販の薬を服用します。
また、重症化リスクのある人に対しては治療薬の投与を行います。
対症療法
せき | ・鎮咳薬や風邪薬などを服用 ・室内を加湿 |
---|---|
発熱 | ・解熱剤や風邪薬などを服用 ・氷枕や冷却シートで冷やす ・水分補給 |
筋肉痛 | ・湿布薬や痛み止めを使用 ・マッサージやストレッチをする |
頭痛 | ・鎮痛薬や風邪薬などを服用 ・氷枕や濡れタオル、冷却シートで冷やす |
呼吸困難 | ・「口から吐いて、鼻から吸う」を意識する ・呼吸しやすい体勢をとる |
のどの痛み | ・鎮痛剤や風邪薬などを服用、使用 ・のどアメをなめる |
下痢 | ・整腸剤や下痢止めを服用 ・水分補給 |
嘔気・嘔吐 | ・胃腸薬や吐き気止めを服用 ・横向きで寝る |
腹痛 | ・胃腸薬を服用 |
イブプロフェンやロキソプロフェンといったNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)の服用は、新型コロナウイルスの症状を悪化させるといった情報が出ています。
しかし、科学的な根拠は得られていません。
それでも不安があるという人は、アセトアミノフェンのみを配合した医薬品を服用しましょう。
処方薬ではカロナールやアセトアミノフェン錠、市販薬ではタイレノールAやバファリンルナJなどがあります。
NSAIDsのほかにも服用する薬に不安のある人は医師に相談しましょう。
軽症者に用いられる治療薬
軽症時において次の1~3の項目にすべてあてはまる人のみ治療薬の投与が可能です。
1、発症から7日以内
2、酸素投与を必要としない
3、重症化リスクの因子を1つ以上持っている
【重症化リスクの因子】
- 50歳以上
- 肥満(BMI30以上)
- 心血管疾患(高血圧を含む)
- 慢性肺疾患(喘息を含む)
- 1型または2型糖尿病
- 慢性腎障害
- 慢性肝疾患
- 免疫抑制状態
治療薬 | 製造販売元 | 作用 | 対象者 |
---|---|---|---|
ロナプリーブ (カシリビマブ/イムデビマブ) |
中外製薬 | 細胞へのウイルスの侵入を阻害 | 入院患者 外来患者 往診患者 |
ゼビュディ (ソトロビマブ) |
グラクソ・スミスクライン | 細胞へのウイルスの侵入を阻害 | 入院患者のみ ※今後、外来や往診でも使用できる見込み |
中等症|対症療法や治療薬の投与、酸素マスクなどを使用します
肺炎がある場合は中等症となります。呼吸が困難となるため、入院が必要です。
中等症の中にも中等症Ⅰと中等症Ⅱがあり、それぞれ治療方法が異なります。
・中等症Ⅰ
対症療法を行いながら、症状に合わせてレムデシビルの投与が行われます。
中等症Ⅰでは酸素投与が必要ないため、ステロイドの使用はすべきでないとされています。
・中等症Ⅱ
呼吸不全となるため、鼻カニューレや酸素マスクにより酸素投与が行われます。
症状が急速に悪化する場合はデキサメタゾンやレムデシビル、バリシチニブ、トシリズマブが投与されてます。
鼻カニューレとは?
酸素を供給するために両方の鼻腔につける管。
酸素マスクとは?
鼻と口を覆って酸素を供給するマスク。
重症|人工呼吸器や人工心肺装置で呼吸を保ちます
重症になると自力での呼吸が困難となるため、肺を休ませてウイルスの排出を待つ必要があります。
そのため集中治療室に移り、人工呼吸器やECMO(体外式模型人工肺)を使用。
同時にデキサメタゾンやレムデシビル、バリシチニブなどの治療薬を投与します。
人工呼吸器とは?
酸素の取り込みや二酸化炭素の排出が上手く行えない時に使用する、肺機能の一部を補助する医療機器です。
口から外よりも気圧が高いガスを送り込み、この圧力によって肺を膨らませて呼吸をサポートします。
ECMO(体外式模型人工肺)とは?
ポンプで体内から血液を抜き出し、肺の代わりに酸素と二酸化炭素を交換。酸素を含んだ血液を体に戻すことで呼吸を補助します。
そのため肺をまったく使用しなくてもいい状態を作ります。
ECMOでは太い管を体に入れるためリスクが高く、生命維持の最終手段として行う処置です。